ここ数日は、「人が死なない防災」という本のご紹介しています。
本の中に、「生きるための指針」として、3つの原則が書いてあります。
その一「想定にとらわれるな」
その二「最善を尽くせ」
その三「率先避難者たれ」
今日はその三「率先避難者たれ」についてご紹介します。
実は、人は元来「逃げることのできない」生き物です。
本の中にはこのようにあります。
「正常化の偏見」とは、「自分は大丈夫」と一生懸命思い込もうとする心の作用です。自分にとって都合の悪い情報を無視したり、 過小評価したりして、「いつもと変わらず正常である」と心の状態を保とうとする、人間の特性です。
つまり、最初に届いたリスク情報を無視するのです。
人間は、大丈夫だとは思えない事実を目の前に突き付けられるまで、そういう「正常化の偏見」の状態を続けます。
「だからな、人間っていうのは元来逃げられないんだ。みんなで「大丈夫だよな」と言いながらその場にとどまっていると、全員が死んでしまう。だから、最初に逃げるっていうのは、すごく大事なこと。だけど、これが難しいんだ。」
「だから、君は率先避難者にならなくてはならない。人間には「集団同調」という心理もあって、君が本気で逃げれば、まわりも同調して、同じように逃げはじめる。つまり、君が逃げるということは、みんなを助けることにつながるんだ。」
グラウンドに地割れが走ったのを見て、「津波が来るぞ!逃げるぞ!」と言って真っ先に逃げた釜石東中学校のサッカー部員たちは、模範的な率先避難者でした。それを見て、他の中学生も次から次へと逃げた。それを見た小学生たちも逃げた。さらに、それを見たおじいちゃん、おばあちゃんも逃げた。
こうやって、率先避難者が真っ先に行動を起こすことによって、それが波及していって、本当にギリギリのところで多くの命を救うことができたわけです。
私自身は、東日本大震災の日は、東京に出張していて、学会の会場で地震にあいました。はじめの揺れは普段は感じたことがない大きな揺れではありましたが、しばらく揺れると収まったので、会場にいる日本人の多くは再び講演を再開しようとしました。
すると、一番前に座って聴講していた外国人の方が立ち上がって振り返り、英語で大きな声でいいました。
「Are you sure? クレイジーだ!プレゼンテーションなんてしている場合じゃないだろう!?逃げるべきだ!」
そんな英語だったと思います。そして、その方は、自分の荷物をまとめはじめました。
そうしているうちに、すぐに次の揺れがやってきました。会場の天井から吊るされている電気が落ちてくるのではないかと思うほどに揺れ、揺れは止まらずに揺れ続けました。司会者の方が「いったん中断します。外に避難してください」とマイクでおっしゃいました。
私が子どもの頃から受けていた防災訓練では「地震の時は手には何も持たずに逃げるように」と教わってきました。でも「今、手ぶらで逃げてしまっては、絶対にあとから困る」と考えて、もう建物の中に戻らなくていいように、机の上の荷物をすべてまとめて外に出ました。階段を下りて外に逃げている間にも、ずっと揺れていたのを記憶しています。
こうして当時のことを思い出すと、いかに自分の判断が鈍かったかがよく分かり、とても恥ずかしくなります。きっと私がああしてもたもたしている間にも、釜石の子どもたちは必死で走っていたと思います。
あの時の外国人の方は、私の周りにいてくれた「率先避難者」でした。私は彼に感謝しなければなりません。
日本には本当によく地震が来ます。だから、「また地震か、でもこれまでも大丈夫だったから大丈夫」などと考えてしまうことがあります。でも、それではいけないということです。逃げて、何ごともなければそれでいい。「正常化の偏見」を乗り越えて「率先避難者」になることは簡単ではありません。しかし、そこを乗り越えなければならない。自分の命を守れるのは、自分の判断力と行動力だけだからです。そのためにはまず、自然に対する畏敬の念を持ち、謙虚になるところからだろうと思います。
明日も防災についての話を続けます。実は、明日書く内容が、みなさんに一番伝えたいことです。連日長くなってしまっていますが、とても大切なことなので、少し大事に書いていきたいと思っています。
この本は、釜石での経験を通して、多くのことが学べる一冊です。防災についてだけでなく「自分の頭で考える」ということはどういうことなのかが良く分かる一冊です。ぜひお子さんと一緒に読んでいただきたいと思います。
今日も読んでいただきありがとうございます。自分で学べる子、自分で考えられる子を増やしたいという想いでブログをはじめました。できるだけ多くの方の目に留まるといいなぁと思ってランキングに参加しています。応援していただけると嬉しいです。