木曜日に、藤井七段が最年少でタイトルを獲得しました。
私は普段、情報の分野の研究者として企業研究所で働いています。人工知能分野の片隅ともいえるかもしれません。その立場で、今回あらためて「プロ棋士の方々はやっぱりすごい、AIなんて到底かなわない」と心から思いました。
少し前から、AIが強くなった時のプロ棋士の方の存在価値のようなものが言われるようになりました。
棋士の存在価値というのが何なのかを、問われているということだと思っています。
それはまさに対局をしている姿ですとか、背景ですとか、周りにある環境とか、そういうものを含めた全てのところで「沢山の人達に魅力を感じてもらえる世界にしなくてはならないんだなぁ」というようなことを、痛感しています。
本当にその通りで、棋士の方々のお人柄とか悩む姿とか、そういうのをすべて含めて多くの人が魅せられていると感じました。
第四局の対局後、渡辺二冠のブログにはこんな内容がありました。
▲68金と寄って左側は受かったと思っていましたが、ここから△46歩▲同銀△25金と右辺に展開されて、自信が持てない展開になっていきました。
▲59飛に誰でも浮かぶ△47桂は▲同金△同金▲78玉でむしろ先手が良くなるため「どういう狙いなんだろうか」と思っていましたが、△86桂は気が付きませんでした。意味としては▲78玉を防いでから△47桂ということなんですが△82飛が当たりになっているので、ただ縛るだけの△86桂は見えにくい手です。
番勝負をやると、手付き、仕草、息遣いなどで相手が形勢をどう判断しているか、なんとなく分かるようになりますが、自信ありという感じで△86桂を指されて、そこでこっちも手が止まったので、この将棋は負けたなと覚悟しました。
「自信ありという感じで△86桂を指されて、そこでこっちも手が止まったので、この将棋は負けたなと覚悟しました」という言葉に、「あぁ、やっぱりAIでなくて人間の指す将棋は面白いな」と思いました。AIは自信があるかどうかを確率で計算することはできますが、相手に負けを覚悟させるような指し方なんて到底無理です。そして、その「自信」を「手付き、仕草、息遣い」で感じることのできる渡辺二冠もさすがです。
今後に向けてという点ではこの指し方を真似するのは無理なので、自分の長所を生かして対抗できる策を見つけるしかないと思いますが、(それが上手くいったのが第3局)
勝ちパターンがそれしかないのでは厳しいので、次の機会までに考えます。
第二局のあとのブログでも書きましたが、相変わらずの前向きな姿勢と謙虚さに、本当に脱帽します。だから強いのだなぁ、と思います。
selfmanagementforkids.hatenablog.com
羽生九段の記事の中にあるような
対局をしている姿ですとか、背景ですとか、周りにある環境とか、そういうものを含めた全てのところで「沢山の人達に魅力を感じてもらえる世界にしなくてはならないんだなぁ」
という人間的な魅力の部分ももちろんそうですが、
第四局で第二局と同じ碁盤にしてみるところ(渡辺棋聖の誘導で、第二局と全く同じ盤になりました。この「魅せる」将棋は本当にすごいと思いました)とか、あらゆる手で揺さぶろうとして感情が裏に見えてくるところとか、AIでは到底真似できないのが人間の将棋だと感じました。
AIは、こういういわゆる「人間的な」面だけで人間に負けているわけではありません。
加藤一二三さんが今回の二局目の対局後にこんなツイートをされています。
コンピュータソフトが6億手読み切った所で最善手として提示される異次元の一手を、藤井聡太七段は実戦譜に置いて僅か考慮時間23分にして指したことが話題になっていますが、AIを過大評価する一方で、天才棋士の頭脳のきらめきやひらめきを、そもそも軽視しすぎの世の中ではないかと歯痒い想いがする。
— 加藤一二三@中央公論新社『天才の考え方〜藤井聡太とは何者か』絶賛発売中! (@hifumikato) 2020年6月29日
指し手の部分でも、本当にその通りだと思います。プロ棋士のみなさんを心から尊敬します。
ちなみに、将棋は娘の方が強いぐらいで私は全然だめです。まずは娘に習いながら少し勉強してみたいと思います。
みなさんの励ましが毎日力になっています。いつもありがとうございます。